2014-01-01から1年間の記事一覧
「ありがとう。すっごく、美味しかったよ」 彼は貴子に覆い被さるようにしながら、貴子の耳元で囁いた。一瞬貴子はたじろいだが、流し台を背にして動くことが出来なかった。彼の両手が貴子の背に回され、グイッと引き寄せられた。
カレーライスをパクつきながら、会話が弾んだ。 女子校に通っていた貴子のドジさ加減は、笑いが絶えなかった。 「でね、親友宛のデートの誘いを自分だなんて勘違いして、待ち合わせの場所に行ったの。 キョトンとしてるの、相手が。 そりゃそうよね、言付け…
彼の腕にしがみつくようにしながら、貴子は彼との会話を楽しんだ。彼の、学内における日常やら寮生活のことやらを、根ほり葉ほり聞き質した。そして、彼の母親の事に話が進んだ。
「ひえぇっ! 床に顔が映りそうだ。おぉっと、レースのカーテンもある」 彼は部屋を見渡しながら、感嘆の声を上げた。 そしてベッド横の小さなテーブルを見つけた。 「やっぱりテーブルが居るよな」
大学の講義が終わると同時に、彼は学友からの誘いを全て断って飛び帰った。 火曜日の今日はデパートの公休日で、貴子がアパートに来ている筈だった。 「合い鍵を渡すよ」と言う彼に、溢れんばかりの笑顔で受け取ってくれた貴子だった。
アパートの管理人からデパートからの荷物を受け取る際、 「えゝ、聞いてますよ。“彼女が受け取りますから”ってね」 と、笑顔で声をかけられた。 貴子は顔を真っ赤にしながら、逃げるように部屋に駆け込んだ。
うほっ、うほっ、うほほほ! やったあ! 一等賞だい!
“わたしったら、なにを言ったのかしら。早く帰ってきてね、なんて。 まるで新婚の奥さんみたいなことを言って。変に思わなかったかしら。 どうかしてるわ、わたし。彼は、まだ学生なのよ” 帰り道、今夜の彼とのことを思い返しては、ぽっとほほを赤らめる貴子…
「ねえねえ。これからさ、あなたのアパートに連れてってよ。 次のお休みの日に、お邪魔したいから。 日用品は、明日デパートで揃えてあげるから。 私に任せてくれるでしょ? うんと、可愛らしい柄を揃えてあげる」
「だから、久しぶりの配達はどうだったの? って、聞いてるの」 焦れったさを感じつつ、貴子は問いかけ直した。 貴子にしてみれば、彼との共通の話題といえばその事しかなかったのだ。
喫茶店から外に出ると、とたんに寒風が二人を襲った。 「うぅ、さぶい。寒いよお、貴子さあん」 別に、意味のある言葉ではなかった。全く、他意はなかったのだ。 しかし貴子は、 「はい、はい。分かったわよ。これでいい? 少しは、暖かいでしょ」 と、彼の…
「ところでさ、おみやげは?」 貴子は彼の周辺に、それらしきものが無いことを訝げに思いつつ尋ねた。 彼は、ニヤリとほくそ笑むと 「へへへ。実は、口実でした。ごめんなさい」 と、悪びれることなく答えた。
テーブルに並べられた二種類のサンドイッチを、二人してパク付き始めた。 「ねえねえ、野菜サンドも食べなきゃだめよ!」 彼がハムサンドに手を出すと、貴子は軽く彼の手をつねった。 「痛てて。もう、母親みたいなこと言わないでよ」
「お待たせ。ごめんね、遅くなって」 息せき切って、貴子が飛び込んできた。 彼の前に置かれた冷水を一気に飲み干しながら、業務終了直前に持ち込まれたトラブル処理報告書の処理に時間を取られたと弁解した。
「うげえぇ、うげっ!」 初っぱなから汚い言葉で、すみません。 本日は、胃カメラの日なんです。 この辛さは、経験された方ならお分かり頂けますよね。
伝票を繰りながら、彼は愕然とした。区域の変更が為されていた筈なのに、元の区域に戻っていた。 「あのお、課長。区域が違うんで…」 彼は井上の元に出向き、困った顔つきで尋ねた。麗子の居る区域に戻っていたのだ。デパート側の方針として、半年毎に区域の…
実のところは、伝票を整理している今も、気もそぞろだった。 “今日は、だめかなあ。忙しそうだもんな” そんな時、貴子から声をかけられた。 「ミタライくーん。追加よお!」 「ほぁーい!」
車窓から見える町並みが、次第に都会色に染まり始めた。 “あゝ、帰ってきたんだ” そんな感慨を覚えた彼は、 「もう、田舎では暮らせないかも」と、ポツリと呟いた。
甘うござんしたです、はい。 「寒う!」 と飛び起きましたら、な、なんと! 時系列で、写真でのご報告です。
一瞬の事とはいえ、彼の心に過ぎった気持ちだ。 すぐにも打ち消しはしたが、そんな己が忌まわしく思えた。 これから茂作と顔を合わせる度に、居たたまれない思いを抱いてしまうのだと思うと、居たたまれない。 せめてもの罪滅ぼしにと、昨夜は介護の真似ごと…
電車が動き出すまで、小夜子の言葉は終わりがなかった。 彼にしても、後ろ髪を引かれる思いではあった。 バイトは、一週間の休みを取っての帰省なのだ。 確かに、始めから三日間だけの帰省のつもりではあった。 しかしそれとて、伸ばすことはできる事だった。
「はい、はい。ありがとうねえ、タケくん。後はお母さんがやりますよ」 茂作の上半身に塗り終わった時、母親が後ろから声を掛けてきた。 「武蔵よぉ、ありがとうよぉ」 意外な言葉が、茂作の口から漏れた。 「違いますよ」 と、言いかけた彼の口を遮るように…
あれこれと茂作の世話をやきながらも、小夜子は快活に座を盛り上げた。 彼もまた、大学生活やバイトの事を話した。 彼の話の大半はバイト時におけるエピソードだったが、 「学業に響かないようにしなさい」 と言う言葉には、耳が痛かった。
“こんなに軽いのか” 彼は、驚きの気持ちを抑えきれなかった。気のせいか、身長も縮んだような気がした。 「寒いのお」と言う茂作に、たっぷりと綿の入った褞袍(どてら)を着せた。
「あら。早苗ちゃん、帰るの? お夕食を一緒にしないの?」 ただならぬ気配に気付いた母親が、台所から顔を出した。 早苗は何も言わず、そのまま外に駆けだして行った。
早苗は意味ありげに笑うと、彼の傍に寄ってきた。 そして爪先立ちすると、彼の耳元で囁いた。 「ファーストキス、しちゃった」 顔を赤らめながらの早苗の言葉に、彼は意味がつかめずに 「ファーストキスだ?」 と、小声で聞き返した。
分かりますか? ふじ、もしくは、サンふじに限定ですがね。 筋ゝ模様になっているのが、分かりますか? これが、ミソなんですよ。 蜜が多いサインなんですって。 業者さんの説明ですから、間違いないですよ。
翌日お昼近くになって、彼は戻った。 「ただいまあ!」 努めて明るい声を、彼は上げた。 「お帰りなさい。楽しかったようね、良かったわ。夕べはどうしたの?」
岐阜市での、初雪です。 飛騨地方では、すでに大雪になっていますが、近辺では起用が初雪です。 といっても、みぞれ混じりの状態ですが。
「シャワーを浴びたいわ」 真理子がベッドから下りながらも、二人の手は繋がれたままだった。 そして彼もまたベッドから下りると、再び唇を重ねた。 「お願い、浴びさせて、、」