昭和人の恋ものがたり

団塊世代の、じじいの妄想話です。

2015-01-01から1年間の記事一覧

お知らせ

明日12月27日から二泊三日の関西旅行です。交通費節約のために、車での移動です。姫路、京都、そして奈良へと、まるで昔の修学旅行ですよ。

にあんちゃん ~警察署の一室においてのことだ~ (二)

孝男の勤める銀行においても、上司からの叱責に給湯室に駆け込む女子行員がいる。男子行員の殆どが、その上司に対して「そこまで言わなくても」といった顔を見せる。しかし孝男はそう思わない。どころか心内で、泣くぐらいなら手を出すなよ、と思う。己の能…

にあんちゃん ~警察署の一室においてのことだ~ (一)

[水たまりの中の青空]を中断しています。新しい作品を、その間にお届けします。 兄妹三人と両親、そして祖父母との五人家族の物語りです。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)もうお母さんじゃないんだ

言葉にするにつれ、すべてが消えていった。兄妹と口にした途端に、早苗が女に見えた。身内と口にした途端に、早苗が見知らぬ女に感じられた。好きか? と口にした途端に、激しい劣情が湧き上がってきた。涙目の早苗が、憂いを秘めた女に見えてきた。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)兄妹みたいに育ってきたじゃないか

「早苗の気持ちは嬉しいよ。でもな、僕たち二人は兄妹みたいに育ってきたじゃないか」 涙目の早苗にティッシュを手渡しながら、低いトーンでなおも続けた。 「早苗の気持ちは嬉しいよ。こんなステキな女の子に想われ続けて、ほんとに嬉しい。 これは、本心だ…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)二人が許婚になってた件だ

「ホント? じゃあさ、初詣でにつれていってくれる?」 顔を伏せたまま、早苗は彼に確かめた。 「あゝ、いいさ。お母さんが帰ってきたら、出かけよう。だから、もう泣かないでくれよ」

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)精一杯のもてなしをしたつもりだった

彼の前にお膳を置いた早苗は、お屠蘇を差し出した。 「なんだよ、早苗がするのか? お母さんを待つよ」 「おばさんに、頼まれたんだもん。少し遅くなるからって、お願いされたもん。さあ、おじいさんが起きる前にすませようよ」

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)大人だけに囲まれて育ったから早熟なだけだ

取り残された彼は、狐につままれた思いだった。 妹だと公言してきた彼だった。 大学においても同世代の女子には興味を持たない彼だった。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)早く上がって、あ・な・た

早苗は不思議そうな顔で、彼を見下ろした。 段差があるとは言え、早苗に見下ろされるとは、思いも寄らぬ彼だった。 “子供だ”と馬鹿にしてきた彼だったが、いつの間にか早苗の身長は伸びていることに驚いた。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)早苗が満面に笑みを浮かべて

彼が実家に辿り着いた時には、太陽はすでに正天にあった。玄関の戸に手を掛けつつも、すんなりと入るのが躊躇われた。 “大丈夫さ、何もなかったんだから。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)男の恥、よ

昨夜の雪が嘘のような晴天だった。 道端に残っている雪が、大雪だったことを証明しているだけだ。 車の行き交う道路は、もう殆ど乾いている。 時折チェーンを巻いた車が走っている所を見ると、裏通りには未だ残っているのかもしれない。 彼が目覚めた時には…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)仕方ない、あそこに

真理子は車をノロノロと走らせながら、予定外の降雪に戸惑っていた。新年を二人きりで過ごしたいという、当初の目的は達せられはした。 “罰が当たったのかしら”

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)信号無視してでも、行けば良かった

やっとの思いで国道に辿り着いた。走行中の車はまばらではあったが、雪はシャーベット状になっていた。信号待ちの折に車から降りると、フロントガラスの雪を取り除いた。雪まみれになったコートを脱いで車に乗り込むと同時に、信号が青に変わった。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)お父さん任せだから

「雪道の経験、ないのよね。いつもお父さん任せだから」 「ゆっくり走れば、大丈夫さ」 心細げに言う真理子に、彼は励ますように答えた。何かアドバイス出来ればと考えてみるが、何も思いつかない。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)〝うおおぉ!〟

突如、雄叫びが響いた。 神社の方角から聞こえた。 どうやら、新年を迎えたらしい。 「タケシさん、明けましておめでとう!」 「明けましておめでとう。今年も、よろしく!」 「わたしこそ、よろしくね。ねえ、タケシさん。前に、来ない」 「そうだね。バッ…

冬用タイヤにはめかえました。

今日、冬用タイヤにはめかえました。初めての、アルミホイールなんですよ。 「燃費が良くなりますよ」

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)さっ、早く車に乗って

「ごめん、ごめん。さっ、早く車に乗って」 真理子の声に導かれるように、彼は乗り込んだ。さ程にヒーターは効いていないが、外よりは暖かい。倒れ込むように後部座席に乗り込んだ彼は、そのまま横になった。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)酔ったふりをしての千鳥足だったが

酔ったふりをしての千鳥足だったが、次第に気分が悪くなってきた。 胸がむかむかとし、頭痛が襲ってきた。 そんな彼の異変に気付いた真理子は、 「大丈夫? 気分、悪いの?」と、心配げに声をかけた。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)打ち合わせ済みのことらしい

「いいわよ」 言うが早いか、真理子がキョトンとしている彼の腕を掴んだ。 どうやら佐知子と真理子の間では、打ち合わせ済みのことらしい。 有無を言わさぬその所作に、彼は苦笑いをする他なかった。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)真理子が参詣を済ませた後

長老たちがざわつき始めたのは、真理子が参詣を済ませた後だった。 小声で、何やら話している。 真理子は気丈に、顔を上げたまま彼の元に寄ってきた。 真理子の家出を揶揄していることは明白だった。 「嫌になっちゃう。もう、慣れたけどね」 ペロリと舌を出…

マイナンバー、届きましたよ。

マイナンバー、届きましたよ。 28日の土曜日の夜でした。 平日は仕事ですし、休みの日も、日中は居たり居なかったりですし。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)鎮守様を祭ってある神社

鎮守様を祭ってある神社では、境内の所々にかがり火が焚かれ、幽玄さを漂わせている。本殿に続く参道脇には石灯籠が多数あり、それぞれに灯火がゆらゆらと揺れている。君代の説明では、それぞれの本家が灯りを入れているらしい。 鳥居の下には、ちらほらと人…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)伸びちゃうわ、おそばが

彼の母親である小夜子の、出産前の大騒動を思い出した。 父である武藏が起ち上げた冨士商会に出向いた折に、誰彼となく大仰な仕草で話してくれたエピソードを懐かしく思い出した。 〝そうだ。確か、同じ姓の竹田勝利というおじさんがいたっけ。 とってもやさ…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)だんなさまの味付けだから、美味しいわよ

「そうなんだ。それじゃ、自分の時間なんて持てないんね」 「そうなの。だから、恋人を作るなんて不可能なの」 頼まれ事に対して、手を抜くことを知らない君代らしいと感じる彼だった。 普段は物静かな君代だが、一つ事に集中している時の君代は、近寄りがた…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)君代さんは、どうするの?

冗談とも本音とも取れる真理子の囁きに、彼は返答に窮した。しかし真理子は彼の動揺を尻目に、そそくさと自席に戻った。照子に何事やら耳打ちしながら、彼の方を見ては二人でほくそ笑んでいる。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)本気よ、わたし

「おゝ、さむいい! こんやは冷えるわあ」 綿入り半纏を着込んだ真理子が、背中を丸めて入ってきた。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)正直のところ辟易する彼だった

「ほらっ、空けろよ。そうか。男の酌より、女性の方がいいか。君代さん、頼むよ」 彼は、君代のお酌で盃を重ねた。 そこはかとない色香を漂わせているのは、和服のせいだけではないように感じた。 どちらかというと姉御肌なのだが、佐知子のように先陣を切る…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)駆け付け三杯だあ

部屋に入ると、皆、相当に出来あがっていた。男たちは顔を真っ赤にし、女性陣も桜色に染まっている。 「さあさあ、駆け付け三杯だあ」と、田口が盃を差し出した。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)口々に歓迎の声が上がった

車のライトの中に、佐知子の姿が浮かび上がった。夫を心配する、新妻そのものだった。 「あいつ、こんな寒空に‥‥」 木は、車のスピードを上げた。佐知子の前で急停車して、 「何で、外に出てくるんだよ。風邪をひいたらどうするんだ!」と、怒鳴りつけた。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十九)『世間体が悪い!』って、怒られたよ

「おゝい、迎えにきたよ」 高木の声が、白い息の道筋となり彼を呼び止めた。 「ありがたい、助かるよ」 「ホントにすぐ出たんだな。迎えに行くって、電話で言えば良かったよ」 助手席のドアが開き、暖かい空気と共に酒の匂いが彼を包み込んだ。 「大丈夫かい…