昭和人の恋ものがたり

団塊世代の、じじいの妄想話です。

2015-07-01から1ヶ月間の記事一覧

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)胸の疼きを抑え切れなかった

二時間近く話し込んだ後、後ろ髪を引かれる思いで、彼は貴子と別れた。その別れ際、彼は人目もはばからずに貴子を抱きしめた。このまま別れてしまうことが、どうしてもできなかった。胸の疼きを抑え切れなかった。 「貴子さんが、欲しい」

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)己を卑下するような物言いに

「いえ。僕は、別に‥‥」 「ありがとう、おじさん。違うのよ、彼は。私を責めているんじゃないの。彼は、とっても優しいひとなの。彼こそ、純真なの。その純真さにつけ込んだ私が悪いの。こんな私を見ると、放っておけなくなる人なのよ。さあ、私の話はもうお…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五) 美味しいコーヒーだよ

二人を包む重苦しい空気を払いのけるように、会話が途切れたのを見計らって差し出された。一旦外に出たマスターだったが、万が一にも修羅場になってはと裏口から戻っていた。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五) 嘘はないと思う彼だった

奥まった席に座った貴子を見て、マスターの声がかかった。 「貴子ちゃん、ちょっと買い物してくるよ」 わざわざ準備中の札に変えて出て行くマスターを見て、やっと彼にも理解できた。 “町内の人は知っているんだ、貴子さんが戻った理由を。そして僕とのこと…

蜂くんとのお約束 ⑩ 2015年7月26日~7月28日

緊急ご報告です。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)貴子の顔が一瞬翳った

相変わらず、一人で話し続ける貴子だった。 彼に口を挟ませる余裕を与えない貴子が、眩しく見える彼だった。 ブラウスの上にカーディガンを羽織っただけの貴子は、少し震え気味だった。 「寒いんじゃない? 貸すよ、これ」 ファスナーを下ろしかけた彼に、 …

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五) 懐かしい声だった

「はい、山田です。」 懐かしい声だった。甲高く、言葉一つ一つが明快に区切られて、時として脳の神経をチクリと刺す声だった。 「貴子さん、ですか? 僕、、」

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)貴子との再会をためらう気持ち

“G区か。ここからだと、三十分位かな。 乗り換えをすることになるから、もう少しかかるかな? やっぱり、近くまで、来たものだからが、一番妥当だよな”

蜂くんとのお約束 ⑨ 2015年7月12日~7月25日

蜂くんたちの、定期報告です。 たわわに実った…なんてものじゃありません。 今にも落っこちそうですよ。 重量に耐えかねて、ドスン! なんて。 「ぼくのせいじゃないからね」 今から声をかけ続けていますよ。 この混み具合は何でしょう? いよいよ、なんでし…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)ピンク電話

空腹感を覚えた彼は、行きつけの食堂に向かったが、あいにく定休日だった。やむなく喫茶店に入ると、カレーライスを注文した。 “吉田君に見つかったら、又言われそうだなあ”

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)プレゼントされた赤いジャンパー

翌日目覚めた彼は、頭の芯に爆弾を抱えていた。 時計は既に、午後の三時近くを指している。 昨晩(と言えるかどうか)アパートに辿り着いた時、日付が変わっていた。 二時近かった記憶がありはするが、それにしても十二時間以上も眠り続けたことになる。 体の…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)特別な女性なのだ

車は静かに本道に入り、猛スピードでインターチェンジを出た。麗子は、国道に下りてすぐのモーテルに、車を滑り込ませた。その間僅か十分程であったが、彼には長い時間に感じられた。麗子の思いとは裏腹に、彼は気まずさの中に居た。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五) 激しい怒りの気持ちが

麗子は、彼が泣いていることに気が付いた。彼の目からこぼれている涙を、麗子は優しく拭き取りながら「大丈夫よ、大丈夫。私が、導いてあげるから」と、彼の耳元に何度も囁いた。 “導くだって? 冗談じゃない!僕の何を知っていると言うんだ、麗子さんが”

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)分かっていただけるかしら

「貴方はね、優しすぎるのよ。私がどんなに意地悪しても、どんなに邪慳にしても、いつも笑って許してる。残酷なことなのよ、それは。貴方の心の中に、私に対する畏怖の念といったものがあるのね。私、武士さんが好きですのよ。純真さが、眩しくもありました。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十五)獲物を見つけた鷹さながらに

「どうして。どうして、麗子さんは僕を‥‥」 麗子の真意を掴みきれない彼は、意を決して訴えた。 「僕を、僕を一体どうしたいんですか? その答えを、僕は麗子さんから聞かせて貰えない。地獄です、これは。 やっとの思いで、麗子さんから逃れ得たと思ったの…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十四)母さんも非難めいた言葉をかけますか?

「牧子さんて、どんな方? その方も不倫中なの? どうも、武士さんって分からないわ」 「いえ、違います!」 「でも、牧子さんって仰有ったわよ、今」

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十四)真っ当な道に、戻してあげたのよ。

彼にも、やっと合点がいった。何故今頃になって、麗子が彼に連絡をしてきたのか、が。 “そうか、慰めだったんだ。それにしても、あの貴子さんが。あの清楚な貴子さんが信じられない‥”

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十四)私を守ってください

「いや、実、、、」 「いいのよ、何も仰有らないで。責めてるのでは、ないことよ。武士さんは、悪くありませんわ。唯、お可哀相で。でも凄い女性ね、男を手玉に取られるのだから。ええっと。確か…お名前は、貴子さんでし、、」 「牧子さんは、そんな女性じゃ…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十四) 麗子さんに酔ったみたいです

突然に、麗子が顔を上げた。間近にある麗子の唇が、悩ましく感じられる。 「麗子さんに酔ったみたいです‥」 脳裏に浮かんだ言葉は、かすれ気味の声で発せられた。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空~(十四) 心のバランス

疲れている麗子ではあった。婚約者の独善性に振り回される日々に、疲れている麗子だった。 「黙ってついてくれば、いいんだ!」 少しでも異論を唱えると、叱責された。思えば、そんな不満のはけ口を彼に求めていた麗子だった。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四)混乱は、極致に達した

彼にしても、驚いた。構えることなく出た言葉に、信じられない思いだった。以前の麗子からは、想像も出来ないことの連続に、正直のところ面食らっていた。嘗ての傲慢さが消え、姉さん気取りの麗子だった。車中で弁当を差し出されること等、考えられない。洒…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四)そろそろ起きて

牧子と疎遠になって以来、女性との縁がプツリと切れてしまった彼だった。 由香里が相変わらず、彼とのデートをせがんでくるが、気乗りがしなかった。 真理子の件が一段落すると、無性に牧子に逢いたくなる彼だった。 一度手紙を書いたものの、牧子からの返事…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四)クルーザーの経験は?

車が、静かにパーキングエリアに滑り込んだ。 海が見える、眺望の良い場所に車は止められた。 窓を少し開けると、潮の匂いが車の中に入り込んできた。 軽く深呼吸をしながら、麗子は海に視線を投げかけた。

蜂くんとのお約束 ⑧ 2015年6月21日~7月11日

始まりは、一匹の蜂くんでした。可愛らしい物でした。 それが、あれよあれよという間に、 小舟から、巨大軍艦へと変貌です。 いや、巨大空母というべきですかね。 こうなってしまっては、実効支配状態です。 国際司法裁判所へ訴えようとしても、多分のこと蜂…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四) 忘れて! 全て!

高速道路に入ると、麗子は車のスピードをグングン上げた。 メーターを見やると、優に100kmを越えていた。 「どこへ、行くんですか?」 不安げに尋ねる彼に、麗子は薄ら笑いを浮かべるだけだった。 今日の麗子は、彼の知る麗子ではなく、異邦人のように感じら…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四) 違和感を感じる彼

読み終えた後、彼は言い知れぬ疲労感に襲われた。 麗子の真意が、皆目分からぬ彼だった。 慰めを求められているのか、裏を返して婚約者の自慢をしているのか、判然としない。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四) 麗子からの手紙・五

その後、彼は頻繁に求めるようになってきました。 でも、麗子は拒否しています。そんなにふしだらな女ではありませんことよ、麗子は。 勿論、無理強いをするような彼ではございませんし。 彼を愛していますわ、勿論。 でも、彼には立派な学者になって頂きた…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四)麗子からの手紙・四

僅か三ヶ月でしたけれど、楽しく過ごしました。皆さん良い方ばかりで、色々と良くして頂きました。井上課長さんは、特に気を遣ってくださいました。でも、大変な仕事でした。

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四) 私を通して

貴方はね、私を通してご自分を探してらっしゃったの。 もしもあの噂が本当だとしたら、その方の中に、ご自分を見つけようとなさっているのよ。 ご自分を押し殺し、お相手の反応を見ていらっしゃるの。 そしてね、ああ、自分はこんな人間なのだと、推し量って…

長編恋愛小説 ~水たまりの中の青空・第一部~(十四) 麗子からの手紙・二

彼には、「青天の霹靂」の如き文面だった。 思わず消印の日付を確認した。 “麗子さん、僕からの手紙、今の今まで読んでなかったのか?” 大きなため息をつきながら、麗子の指摘に対して “確かに、言われてみればそうかも。 高嶺の花だった、麗子さんだ。 床の…