その後、彼は頻繁に求めるようになってきました。
でも、麗子は拒否しています。そんなにふしだらな女ではありませんことよ、麗子は。
勿論、無理強いをするような彼ではございませんし。
彼を愛していますわ、勿論。
でも、彼には立派な学者になって頂きたいの。
研究をおろかにさせることは、できません。
何せ、日本の将来を左右するような、立派な研究なのですから。
超伝導とかいう技術の開発に、携わっているのですから。
ごめんなさい、真実を吐露いたしますわ。
麗子は、疲れました。
彼に合わせることが、苦痛になってきましたの。
彼にとって都合のいい女を演じているのが、疲れました。
彼の話題は、その研究が中心です。興味のない態度を取ると、すごく怒り出すのです。
行き詰まっている時など、大変です。
慰めの言葉をかけようとしても、
「何もわからないくせに!」とか、「世界に遅れる訳にはいかんのだ!」
と、怒鳴られることもあります。
彼が笑う時に微笑み返し、眉をひそめる時には悲しい顔をします。
そうしなければ、不機嫌になるのです。
でも時として、それが彼を怒らせることもあります。
全てが、彼中心なのです。
麗子を、一人の人間として見てはくれないのです。
今では、彼と私の繋がりが希薄なものに感じられます。
唯一の絆は、肉体関係だけなのです。
会う度に、彼は求めてきます。
当初こそ拒否しましたが、とうとう暴力で…。
恥ずべき事ですが、ずるずると続いているのです。
麗子には、苦痛以外の何物でもありません。
こんな麗子を、貴方は軽蔑されます?
いえ、貴方はきっと許してくださるわね。
哀しげな目で、麗子を慰めてくださることでしょう。
優しい貴方ですもの、ね。
嬉しいのよ、麗子は。
でも、その優しさが辛くもあるのです。
武士さん、どうぞご自分を偽らないで。
どうぞ、ご自分に正直な貴方でいてください。
かしこ