昭和人の恋ものがたり

団塊世代の、じじいの妄想話です。

[淫(あふれる想い)] 舟のない港 (六十七)麗子は、平凡な毎日に

 麗子は、平凡な毎日に倦怠感を感じはじめていた。

安定した日々が、つまらなく思えていた。

そんなおり、偶然にガソリンスタンドで働く男を見かけた。

後日、男のことを、「店長なの?」と尋ねたところ、アルバイトだと聞かされ、愕然とした。あまりのその変わり様に、麗子自らが侮辱されたような気がした。


 麗子にしてみれば、捨てられたも同然であった。

ことの真相が知りたくなり、そのスタンドに出むく途中に男を見つけたのだ。

「これから仕事だ」という男を、強引に呼びとめたのだ。

しかし男をいざ前にすると懐かしさが募り、またいまの生活に刺激をもとめていたこともあり、となり町まで出かけた。

おしゃれそうなこのレストランは、リサーチ済みだった。

いつか夫とともに立ち寄るつもりの場所だった。


 レストランを後にして、麗子は車を動かした。

車中の時計は八時すこし前を指していた。

ふたりとも、このまま帰る気にもなれずにいた。

男の、つぶやくような「ひと休みするかい?」ということばに、思わず麗子は、「そうね、時間もはやいし」と、こたえてしまった。


 ばつが悪くなった。その気がなかった、とは言い切れない。

といってその気があった、とも言えない。

万が一にそんな雰囲気になればその寸前でやめる、それが麗子の思いだった。

ミドリに対する嫉妬心もあった、男への恨み辛みもあった。

その気にさせて、はげしく麗子を求めてくる。


 そんな男にたいし冷然と「あたくしには夫がいますのよ」と告げる算段だった。

土下座せんばかりに求める男を、まるで奴隷のようにあつかう。

上から見下ろして、あの夜のことを謝罪させて、それこそヒールでもって男の体を蹂躙する。

SMの世界すらかわいらしく思えるほど、男を蹂躙してやりたかった。