麗子は、平凡な毎日に倦怠感を感じはじめていた。
安定した日々が、つまらなく思えていた。
そんなおり、偶然にガソリンスタンドで働く男を見かけた。
後日、男のことを、「店長なの?」と尋ねたところ、アルバイトだと聞かされ、愕然とした。あまりのその変わり様に、麗子自らが侮辱されたような気がした。
麗子にしてみれば、捨てられたも同然であった。
ことの真相が知りたくなり、そのスタンドに出むく途中に男を見つけたのだ。
「これから仕事だ」という男を、強引に呼びとめたのだ。
しかし男をいざ前にすると懐かしさが募り、またいまの生活に刺激をもとめていたこともあり、となり町まで出かけた。
おしゃれそうなこのレストランは、リサーチ済みだった。
いつか夫とともに立ち寄るつもりの場所だった。
レストランを後にして、麗子は車を動かした。
車中の時計は八時すこし前を指していた。
ふたりとも、このまま帰る気にもなれずにいた。
男の、つぶやくような「ひと休みするかい?」ということばに、思わず麗子は、「そうね、時間もはやいし」と、こたえてしまった。
ばつが悪くなった。その気がなかった、とは言い切れない。
といってその気があった、とも言えない。
万が一にそんな雰囲気になればその寸前でやめる、それが麗子の思いだった。
ミドリに対する嫉妬心もあった、男への恨み辛みもあった。
その気にさせて、はげしく麗子を求めてくる。
そんな男にたいし冷然と「あたくしには夫がいますのよ」と告げる算段だった。
土下座せんばかりに求める男を、まるで奴隷のようにあつかう。
上から見下ろして、あの夜のことを謝罪させて、それこそヒールでもって男の体を蹂躙する。
SMの世界すらかわいらしく思えるほど、男を蹂躙してやりたかった。